税金よりも「保険料未払い」が危険な理由
事業を営む上で「税金」は避けては通れないコストです。
さらに、軽視されがちですが健康保険の加入・保険料の納付についても、経営を続けていく上で大変重要な課題と言えます。
最近では社会保険の未加入に対して厳しく取り締まられたり、特定の許認可を取得できなかったりと、数多くのデメリットも見られますので、社会保険の基礎知識や保険料未払いのリスク等について確認しておきましょう。
- 1.社会保険とは
- 1-1.社会保険の加入義務がある事業所
- 1-2.保険料算定の仕組み・サイクル
- 2.保険料が経営難を招く?
- 2-1.赤字・黒字に拘わらず課される
- 2-2.歩合制のスタッフが多い企業は要注意
- 2-3.社会保険の加入が必須な業種
- 3.保険料が払えない場合の対処法
- 3-1.まずはキャッシュの確保を
- 3-2.分納・納付猶予を受ける
- 3-3.人件費の見直し
社会保険とは
社会保険にはいくつかの意味合いがありますが、当ページでは被用者保険としての社会保険について解説していきたいと思います
被用者保険としての社会保険には「介護保険」「健康保険」「厚生年金保険」などがあり、介護保険は40歳以上の労働者が対象・健康保険と厚生年金保険は労働者全員が対象です。
健康保険には、会社員等が加入する「協会けんぽ」、特定の事業者のみが加入できる「組合健保」などがあります。
社会保険の加入義務がある事業所
以下に該当する事業者は、社会保険へ加入しなくてはなりません。(強制適用事業所)
・国や地方公共団体
・事業主を含む従業員1人以上の会社
・常時使用の従業員が5名以上の個人事業主
国や地方公共団体・株式会社等については原則全てが強制適用事業所となり、個人事業主の場合は常勤するスタッフが5名未満であれば自由加入(任意適用事業所)です。
そのため、個人事業主かつ少人数で事業を営んでいる場合などは、必ずしも社会保険に加入しなくともよいということになります。(農林漁業など特定の事業では5名以上のスタッフがいても任意適用事業所となるケースがあります。)
強制適用事務所であるにも関わらず未加入の場合、罰則(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)を受けてしまう恐れがありますので、必ず加入するようにしてください。
保険料算定の仕組み・サイクル
国民健康保険とは異なり、社会保険は会社と労働者が保険料を折半して支払います。
協会けんぽの場合は給料の10%程度が保険料になりますが、半分は事業者側が負担するため、労働者側の負担額は実質5%前後です。
これに厚生年金保険料率の18.3%が加わり、合わせて収入の約14%ずつを個人と会社がそれぞれ支払う形となります。
保険料は毎年4~6月に支払った給料を元に等級が算定され、等級に基づいた保険料を毎月従業員から預かり、会社負担分と合わせて支払います。
保険料が経営難を招く?
税金と同じく、強制的に支払いが発生する保険料。
しかしながら、税金とは様々な面で異なる性質を有しており、場合によっては税金よりも厄介な存在となるかもしれません。
保険料によって経営難を招く可能性があるシーンについて知っておきましょう。
赤字・黒字に拘わらず課される
企業が支払う税金としては、法人税・住民税・法人事業税などが挙げられますが、これらはあくまでも得た利益に対して課されるという前提があります。
また、消費税や個人の住民税なども納付しなければなりませんが、これらはクライアントやスタッフから預かったお金ですので、企業側に実質的な負担はありません。
一方で、保険料は社会保険に加入するスタッフが存在する限り発生するコストですので、黒字・赤字の如何にかかわらず納付義務が生じます。
したがって「売上好調でスタッフを多く雇っていたが急に赤字に転じた」という場合には注意が必要です。
歩合制のスタッフが多い企業は要注意
前述した通り、健康保険料及び厚生年金保険料は4~6月に支払った給与を基に算定され、その後1年間は原則として等級が変わりません。
給与は交通費や手当などの「総額」によって計算されるため、インセンティブ(歩合給)の場合は一時的に金額が大きくなる可能性があります。
つまり、仮に4~6月に大きな売上を立て7月以降に下落した場合、会社側はその等級分の保険料を1年間支払い続けなければならないのです。
1、2人程度ならさほど影響はないかもしれませんが、これが10人ないしは20人となってしまったらどうでしょうか。
年間差額で数十万円、数百万円に上る可能性もあり、経営に大きな痛手です。
歩合給は事業者側に有利な制度であると思われがちですが、保険料次第では大きなコストアップに繋がる恐れがあります。
社会保険の加入が必須な業種
近年、社会保険の適用を受けていないと許認可が受けられないというケースが目立つようになりました。
例えば、国土交通省では社会保険未加入が多い「建設業界」に於いて社会保険の加入対策が実施されています。
具体的には、建設業許可を申請する時に加入するように指導される、常勤性を証明するために資格者の健康保険証を添付書類にする等です。
各都道府県によって取り扱いは異なりますが、申請書類を受け取ってもらえない・行政指導の対象となるといった恐れがあります。
任意加入事業者であっても、業種によっては入らざるを得ないようです。
保険料が払えない場合の対処法
保険料の未納が続くと「延滞金の発生」「財産の差し押さえや強制調査」など、重いペナルティが課されます。
刑事罰こそありませんが、仮に財産を差し押さえられたとなると今後の経営に大きな影響を与えますし、会社に強制捜査が入ったとなれば信用の低下にも繋がりかねません。
さらに、預金口座が差し押さえた場合、当該銀行には当然差し押さえの事実が周知されてしまいますので、今後の融資が受けられなくなる・取引中止等の恐れもあります。
未納は絶対に避け、早急に対処するようにしてください。
まずはキャッシュの確保を
保険料の納付は、口座引き落とし又は現金納付が原則です。
また、保険料の納付によって運転資金が足りなくなってしまう可能性も考えられますので、まずはしっかりとキャッシュを確保するようにしてください。
銀行融資やビジネスローンでは納付期限に間に合わない・財務状況が芳しくなく審査に通らないなどであれば、ファクタリングを利用するというのも一つの手です。
ファクタリングは財務状況によって可否が判断されるものではなく、税金や保険料の未納があっても利用できる可能性が高いためです。
キャッシュ不足によって事業の継続が困難になっては本末転倒ですので、常にキャッシュフローには余裕を持たせるよう心掛けましょう。
分納・納付猶予を受ける
キャッシュを確保した上で、それでも不足が懸念されるのであれば、分納(保険料を分けて納付する方法)や、納付の猶予が受けられないかを相談してみると良いでしょう。
ただし、これらは「災害」「不慮の事故・病気」「事業の休業や廃止」「前年に比べて利益が下がった」などの要件を満たさねばなりませんので、管轄の年金事務所や労働局に相談してみてください。
なお、分納や納付猶予の判断基準は公表されておらず、企業の状況に応じて管轄の年金事務所の裁量で判断されているようです。
人件費の見直し
なんとか保険料を支払えたとしても、売上に対して人件費の割合が高くなりすぎてしまっている状態が続いては同じ状況を招いてしまいます。
心苦しいところではありますが、人員削減や給与体系の見直しなども含め検討するようにしてください。
なお、アクセルファクターではファクタリング業務と併せて経営や財務に関するコンサルティングも承っております。
キャッシュフローの改善・財務状況の見直しをご検討中であれば是非ご相談ください。